母べえ

母べえ(2007/日本)
評価(お奨め度)★★☆☆☆
監督: 山田洋次
プロデューサー: 深澤宏/矢島孝
原作: 野上照代『母べえ』(オリジナル題『父へのレクイエム』)
脚本: 山田洋次/平松恵美子
撮影: 長沼六男
美術: 出川三男
編集: 石井巌
音楽: 冨田勲
ソプラノ: 佐藤しのぶ
照明: 中須岳士
録音: 岸田和美
出演: 吉永小百合/浅野忠信/檀れい/志田未来/佐藤未来/中村梅之助/笹野高史/でんでん/神戸浩/近藤公園/茅島成美/松田洋治/赤塚真人/吹越満/左時枝/小林稔侍/鈴木瑞穂/倍賞千恵子/戸田恵子/大滝秀治/笑福亭鶴瓶/坂東三津五郎

『家族』『幸福の黄色いハンカチ』、そして最近では『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』『武士の一分(いちぶん)』等名作多い山田洋次監督による第二次世界大戦中の日本を舞台とする人間ドラマ。文学者である夫・野上滋(坂東三津五郎)が治安維持法で投獄という苦境の中で、苦しくも夫の行動を理解し信念を持ち続け、滋のいない家を女手一つで初子(志田未来)と照美(佐藤未来)を守り育て上げた佳代(吉永小百合)が主人公だ。この映画の一番の収穫は母べえ、父べえと呼び合う関係のほほえましい温もりを感じられることである。娘達も初べえ、照べえと呼ばれるのだ。戦時中にあって、戦争批判を執筆に貫き通した父べえは、『わが命つきるとも』でヘンリー8世に主張を通し続け、最後は斬首となったトーマス・モアと重なる。“八紘一宇”の下、戦争思想を強制しようとしていた当時戦中にあって、父べえ、母べえの実直さは悲しき宿命と言える。『わが命つきるとも』でも記載したが、権力に対し正義をかざすのはいいのだが。残された家族の事を考えるとこれがホントの正義なのかと思ってしまうのである。『わが命つきるとも』が収監されたトーマス・モアの視点から描かれていたのに対し、残された母べえと娘達からの視点で描く本作ではそのことをより強く考えてしまう。一方、収監中の滋を父べえと呼ぶ娘達の姿には、厳しい状況にあっても父を慕う家族の絆の強さが伝わってくる。“~べえ”の効果である。自分も家族に限らず、親友なんかの間で呼び合ってみようかとも思う位に気に入った。
結局、終戦迎える前に父べえは死んでしまい。母べえ一人で娘達を育て上げ、立派に医師になった初べえ(倍賞千恵子)と美術の先生になった照べえ(戸田恵子)に見守られながら息を引き取る。本作やはり吉永小百合の映画であることは否めない。野上佳代という主人公をどう描こうというよりも、吉永小百合をどう見せようとしていることを感じてしまう。滋いない母、娘家族の支えとなった山崎徹(浅野忠信)だって佳代に憧れる。そのため結婚適齢期だった滋の妹・野上久子(檀れい)だって、子持ちの佳代に負け、徹にふられるのだ。生涯全うして佳代が亡くなって後、滋の愛と感謝のナレーションをバックに、文学者の家庭を女手一つ教師をして支える姿が流れる。家庭を守り、一家の収入も支える苦労は、最後にちょこっとだけでなく、もっと描けたのではないのだろうか。また、どうしようもない叔父・仙吉(笑福亭鶴瓶)が登場する。『男はつらいよ』シリーズはもちろんであるが、時代劇3部作だって喜劇部分があり、それこそが山田洋次作品なのだが、本作では仙吉がそれを担うキャラクターだ。だが、最近何かと吉永小百合と笑福亭鶴瓶共演の『おとうと』の宣伝を目にするため、こりゃ同じではないかと斬新さを全く感じることが出来なかったのも残念。もっと早く見ていれば仙吉の印象変わっただろうか。

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